■「超高生産性」を生み出した「ポジティブ・リーダーシップ」

「超高生産性」を生み出した「ポジティブ・リーダーシップ戦略」

コロラドの核兵器工場で「超高生産性」を達成

ミシガン大学・ビジネススクール大学院で教鞭をとる、キム・キャメロン教授のグループがコンサルティングをした成果を紹介します。核兵器工場で適応された、ポジティブ心理学ベースのコンサルティング手法の成果です。このポジティブ心理学を応用したリーダーシップを適応することで、並外れた高いパフォーマンスを達成しました。その詳細は、以下をご覧下さい。

シガン大学のキム・キャメロン教授と渡辺誠


コンサルティング実施前の状況

米国コロラド州にあったロッキーフラットの核兵器製造工場では1989年に連邦調査局の調査が入りました。環境を破壊し、環境保護法に違反しているので改善せよとの命令を受けたのです。そのニュースを聞きつけ、街では市民グループやコミュニティの代表者による施設反対の嵐が吹き荒れました。従業員の間にも不安・不満が充満し、苦情が後を絶たない状況でした。

その後、工場は改善が進まず本当に閉鎖せざるを得なくなってしまいました。そこには100トン以上のプルトニウムや、25万立方メートル以上の低レベル放射性廃棄物が残っていました。このまま放置しておくわけにはいきません。ABC放送のテレビ番組でもこれらの建物はアメリカで最も危険な建物と指定されてしまいました。このサイトを浄化する必要がありました。6,000エーカーの土地に800ものビルディングがある広大な場所の最終処理をする必要があったのです。エネルギー庁はこの施設を安全な状態に戻すには70年の歳月と36億ドルの資金が必要であるとの試算を示していました。

その最終処理をコロラドにある環境エンジニアリング会社が請け負いました。この企業にて、ミシガン大学のキム・キャメロンのチームはポジティブ心理学を応用した「ポジティブ・リーダーシップ戦略」を実施したのです。


並外れた高いパフォーマンス

ポジティブ・リーダーシップ戦略

その結果、上の図にあるように並はずれた高いパフォーマンスを達成しました。70年かかる予定の仕事がわずか10年で終わりました。36億ドルの予定だった費用がたった6億ドルで済んだのです。熱心な従業員はアイディアを出し、200もの技術革新を実現しました。これらの技術がスピードアップに貢献しました。品質的な視点でも連邦で定めた基準より13倍もきれいになり、仕事を完了しました。
「ポジティブ・リーダーシップ戦略」が浸透してくると、反対勢力であった市民グループはサポート役に回り、助けてくれました。従業員も900もの不平不満や苦情を申し立てていた状態から、マネジメントに対して最高の評価を与えるまでに変わりました。特権や終身雇用を求め活動していた労働組合員も質の高い仕事を熱心にする人たちに変りました。

「ポジティブ・リーダーシップ戦略」を実施し、ポジティブ感情を豊かにして、「ポジティブエネルギー」を活かして実現した成果です。


「ポジティブ・リーダーシップ戦略」で活用した施策

ここでは以下の「4つの要素」を活かして組織の活性化に取り組みました。

1.ポジティブな風土作り
2.ポジティブな関係作り
3.ポジティブなコミュニケーション
4.ポジティブな意味づけ

「4つの要素」を活かして組織の活性化

これらの考え方をリーダーが身につけて、PMI(ポジティブ・マネジメント・インタビュー)と名付けた従業員との1:1のコミュニケーションを毎月実施することにより、並はずれた高い生産性を成し遂げたのです。


成果

ビジネススクールにいるキャメロン教授たちは、ポジティブ心理学と組織行動学を合わせた学問分野を作り上げ、「ポジティブ組織学」と名付けています。ですから、組織における気持ちや行動の変化がどのような効果を作り出すかを統計データに基づく「実証」で示しています。つまり、ロッキーフラットの核兵器工場では、ポジティブ心理学で効果が証明された方法を利用してコンサルティングを実施し、成果をあげたのです。

このように「ポジティブ心理学」を応用した組織開発コンサルティングは、並はずれた大きな成果が期待できるものなのです。今回ご紹介した事例は、核兵器工場ということで、少し特殊な状況に感じるかもしれません。しかし、これは核兵器に限らず、どの組織にも適応できることなのです。

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