病院での人間関係回復が看護師の定着率を向上させる
AIによるポジティブ組織づくりの効果はまだまだあります。
ある病院では、看護師の定着率が良くなったという効果が出ています。
その病院では、それまで看護師の離職率が高くて悩んでいました。辞めてしまうという状況が続いていたのです。看護師は、資格と経験があればどこに行っても仕事があります。ですから、看護師からすると、気に入らない病院に無理して勤めている理由はないのです。
当然、病院側も離職を止めるための対策を講じます。病院や勤務に関しての不満やダメなところを探し、それを改善しようとしていました。そのため、辞めていく看護師たちに辞める理由を聞いていたのです。看護師たちの回答は「勤務時間帯が合わない」「職場の人間関係が良くない」といったものでした。
人間関係が悪いと言われた看護部門では、そこの看護リーダーが看護師さんに人間関係でダメなところを指摘して直そうとしていたのです。
- 「うちの職場は~だからダメなんだ」。それは、「君たちが~するからいけないんだ」、「うちには問題はたくさんある。ほかにも~もあるし、~もある。」
- 「~のようなことをしているから人間関係がよくないんだ。」
- 「誰の~な発言がいけないんだ」
- 「Aさんは丁寧にやりすぎるから、効率が悪いんだ。もっと早くしないとうちの仕事の仕方には向かないんじゃないか」
普段からこんな会話が多く、人間関係を良くしようとして、かえって、民現関係を壊しているのに気が付きませんでした。こんな会話が増えれば増えるほど、人の気持ちは落ち込み、嫌な気持ちになるからのです。「ひまわり効果」がマイナスに働いていたのです。
「思いやりのある職場」をつくりたい
こうした状況を打開すべく、ポジティブ組織づくりが始まりました。
そこで、AIをベースに短時間でできるワークショップをしました。
看護師さんは一度に集まれないため、同じ内容のワークショップを3回に分けて行い、全員が受けられるようにシフトを組んでもらいました。
これまでの「ダメ探し」をやめてもらい、「イイネ探し」をしてもらうようにしました。
「この病院で働いていいことは何ですか?」
「なぜ、この病院で働き続けているのですか?」
このような質問を行った結果、いくつもの良いところが見つかったのです。
「看護師長は思いやりがある人だ」
「仲間との会話が楽しい」
「私はここで大事にされていること思う」
「お互いに人のことを考えてくれる職場だ」
「ドクターが専門分野では有名な人がおおい」
他にもたくさんありました。「家と職場が近い」といったものも……。
そして、「看護師のみなさんにとっての理想とはどんな職場ですか?」
と質問をして、作り上げたい職場を状況をイメージしてもらったところ、出てきたのは「お互いに支援しあい、アドバイスができる、思いやりのある職場」でした。
それを実現するために、仲間がすでにやっている「良いところ」をもっと実行するようにしたのです。
その結果、看護師同士の思いやりのある行動が増えました。ギスギスしたところが少なくなり、温かい職場に変わりました。より良い人間関係のあふれる職場になったのです。離職率も急激に減りました。
このようにして、この病院は長年の課題だった離職率の低下に成功したのでした。