中の下の支店が全国第4位に! アストラゼネカ・東海支店
アストラゼネカ株式会社は、医師や病院のための薬を販売している会社です。
その会社の営業拠点の1つである東海支店をリードしている松田耕次支店長は、着任時には「18支店の中の下」だった支店を「トップレベル」の支店に変えました。
そんな快挙を成し遂げたのが、「ポジティブ組織づくり」とAI、さらに、松田支店長の人を大事にする信念です。
松田支店長がいつも言う言葉が、「私には80人の家族がいる。80人の子どもを育てるのと一緒だ。」です。支店メンバーを家族と思い、人を大事にしながら、その人たちが成長してくれることを目指している松田支店長。もちろん、支店長として会社の目標を達成するために、さまざまな施策を実施することには余念がありません。
新たな関係性から施策が生まれた
そんな松田支店長が行ったAIを紹介しましょう。
岐阜県、静岡県、三重県の3県を担当する東海支店は、地域が広いため、メンバーは普段なかなか会うことができません。そこで、部下の所長の提案で松田支店長は支店全体会議を開きました。3県にいる支店メンバーが全員集まるのは初めての試みでしたが、その全体会議の場でAIを行うことにしたのです。
初顔合わせのメンバーがグループをつくり、「支店の良さを発見し、うまくいっている部分を共有ました。その上で、「どんな支店になりたいかという理想をつくる」というテーマで話し合いました。コラージュ手法を使ってモニュメントをつくり、理想を表現したのです。
企画段階では「そんなことはうちのメンバーはできないだろう」と思っていた所長たちもいたようですが、いざやってみると大違い。チームで考え、チームのメンバーが力を合わせると、立派なモニュメントができ上がりました。
コラージュができたのは、まさに感動。何もない白紙の状態から、自分たちの支店を表わすモニュメントを作り出したのです。その過程を通じて、お互いの結束が生まれました。そして、「こんな支店を作っていこうよ」と、社員全員の目標が共有化されたのです。
メンバーの結束が主体的な変化をつくり出す
この結束が大きな変化を生み出しました。普段会えない仲間たちが自発的に進めるプロジェクトが企画されたのです。
「普段会えなくても支店メンバーたちの横のつながりを大事にしよう。それぞれの地区でうまくいっていることを共有し合えば、より良い成果が出せそうだ。」
そんな声が多くのメンバーから持ち上がり、主体的にプロジェクトができ上がりました。
具体的には、
・主要製品の販売方法のノウハウを共有するプロジェクト
・競合情報を共有するプロジェクト
・大口の客への戦略や成功事例を共有するプロジェクト
など、未来をつくりあげる5つのプロジェクトが生まれたのです。
ワークショップの後、支店内の各課の活動も大きく変わりました。各プロジェクトのメンバーたちが、営業所の施策や成功事例、あるいは競合の情報を交換し合ったのです。その情報をもとに、各課や営業所で自分たちのチームは何をするかを話し合いました。
すべてみんなで主体的に決めたことなので、実行力が上がりました。その結果、この活動が支店の業績を大きく向上させる原動力となり、「中の下」だった支店を「全国第4位」まで引き上げたのです。
強みを活かして高い成果をつくる
組織が変わるとワークショップで決めたこと以外でも大きな変化がありました。
内藤課長の率いる静岡病院課では、なんと全国1位の成果を出したのです。一人ひとりの強みを発見し、未来の夢を語って、みんなで戦略をつくり、その戦略をみんなが主人公になって実行した結果でした。
また、伊藤課長が率いる静岡エリア3課では、それまで普通の成果だった営業担当者をよみがえらせ、トップクラスの人材に育てたのです。メンバーの強みを引き出し、認め、それをもっと活かすことが、充実して一生懸命仕事に打ち込む人を育て、大きな成長をサポートしました。
これは後日談ですが、同社で所長から支店長への昇進面接が行われた際、12人の候補者のうち10人が、松田支店長の元部下だったそうです。
「メンバー全員の力を引き出すのが、マネージャーの仕事。それにはポジティブで、みんなが考え、成長することが大事。そんな人たちを育てることができたのが、一番うれしい」と、松田支店長は言います。
その後、松田支店長は栄転され、現在は中四国の営業部門を統括されています。